Episode1.さくら色な乙女のスガオ

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「お、オレの名前、知ってたの?」 「え、ええ。席、近いので」 「あ、あぁ、そうか」 そりゃそうだよなぁ……ははは。 「あ、これ……」 「! ダメっ……!」 いらない期待はあっさりと潰された。 気を取り直して、彼女が落とした一枚の紙切れを拾った。 ……拾ってしまった。 「返せ!」 「…………あ、はは……」 すぐに白石にかっぱらわれたが、その紙に記載されていたものは、オレの脳裏に鮮明に残っていた。 「……み、見たな?」 「あぁ、えーっと……」 なんだか白石の口調もおかしい。 でも、そんなのは今のオレには、些細なことだった。 「……さ、さよなら」 「……“魔法少女 ナツメ☆まてりあ”」 「ぎくぅっ!?」 嘘だと言ってほしかった。 だが、彼女の反応はまったく違う。 「お、“俺の妹は最凶小悪魔”」 「あぐっ……」 そう、この反応は……。 「…………“萌えキュンコレクション”」 「あぁっ……!」 まさしく、沈黙の肯定だ。 「く、黒崎ぃ!」 「ぐおっ!?」 「忘れろ、忘れろ、今のこと全部忘れろぉぉぉぉッ!」 「あっ、がっ、ぐぇっ、ちょっ、ちょまっ」 首がっ、揺さぶられてっ、視界がっ、ぐらぐらでっ、脳震盪がっ! 「あぁぁぁぁぁぁぁ! もう生きていけない! だから忘れろ! わたしのためにすべて忘れろーーッ!」 「やめっ、やめろっ、やめてくれっ」 「っていうかむしろ死んでくれ! おまえが逝った後にわたしも逝くから! そうすればお互いにリスクはない!」 なんかっ、こいつっ、むちゃくちゃっ、言ってるっ! 「やめろっつってんだろぉぉぉぉ!」 「……ハッ」 叫んだら、白石が治まった。 あぁ、気持ち悪い……。 「す、すまない、取り乱した」 「うぇっ、げほっ、げほっ……。あ、あのなぁ……マジで死ぬところだったぞ」 「なに、ならば正気を取り戻さなければよかったのか……」 「てめぇ、日常から頭大丈夫か」 「わたしは正常だ! だから死んでくれ」 「なんにも変わってねぇじゃねーか!」 な、何なんだこいつ……。 オレの知ってる白石じゃねぇぞ…………誰だよ。
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