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「……な、なあ、し、白石」
「なんだ……あ」
何を思ったのか、白石は口をおさえた。
「いや、歯になんか付いているとかではなくてだな」
「……な、なんですか?」
「ん?」
あれ……急にしおらしくなったな。
ていうか、これがオレの聞き慣れた白石だ。
「……先に聞きたいんだけど」
「は、はい?」
「おまえもしかして、学校じゃキャラ作ってるのか?」
「…………な、なんのことですか?」
しらばっくれたよこいつ……。
「その長かった間は、肯定と解釈しても問題ないな?」
「な、なんのことですか、さっぱりわたしには何を言っているのか!」
「落ち着け、日本語がめちゃくちゃになっているぞ」
「そ、そんなわけないに決まっているだろうじゃないですか!」
「いやおかしいって」
「と、倒置法ってやつ!」
「それだと普通、『何を言っているのかさっぱりわかりません、わたしには』になるだろ。あと日本語に『だろうじゃないですか』なんてわけのわからん末文は無いだろ」
「し、死語だ! そうだ死語なんだ!」
「見苦しいぞ、どんだけ意固地なんだよ」
っていうか口調が戻ったぞ。
まあ、口には出さないが。
「わっ、わたしは別にっ、いっ、いつも通りだ!」
「だから落ち着けと」
「おっ、落ち着けるか! お、おまえのような得たいの知れないやつの言葉など信じない! こ、この二年間隠し通してきたわたしの秘密を、容易く他者に売りそうなやつの言葉など!」
「遠回しに変質者と言われている気がしてならない! 冤罪だっていうかおまえの偏見だろ、それ!」
「偏見で何が悪い!」
「横暴だ!」
わ、わけがわからん……。
これが、あの……“校内最高美少女”と名高く、我が学校のマドンナと言っても過言ではないはずの“白石 砂羽”なのか?
まるで別人じゃないか……。
「どうせおまえもバカにするんだろ! わたしの趣味を!」
「は?」
「しらばっくれてもムダだ!」
「え、趣味?」
「さっき見ただろう!」
「あ、あー……」
えーっと、確かあれは……。
「“萌えキュンコレクション”とか」
「ぐふっ!」
「“魔法少女 ナツメ☆まてりあ”とか」
「ごほっ!」
「“俺の妹は最凶小悪魔”とか」
「シャアオラァァッ!」
「危ねぇ!?」
思いっきり殴りかかってきやがった。
振りかぶるのが見えたから、避けるのは難しくはなかったけど。
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