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「くっ……わたくしに多くのストレートをお見舞いしておいて、こちらのストレートをかわすとは……面妖な」
「なんもやってねーよ。ってかおまえ誰だよ」
「もう一本!」
「太刀筋見え見えだ」
わかりやすい掛け声と共に放たれた白石の拳だったが、あまりにも見え見えなので容易く防げた。
拳に力が加わると、合わせてオレは、手を押し出す。
聞こえはしないが、ギリギリと音が鳴っている気がする。
「うおぉぉぉおぉぉお! うなれ、おれの拳ぃぃぃぃ!!」
な、なんだこのオーラは……!
「くっ……お、おまえっ……!」
こ、こいつは、間違いない!
「……力、あんま無いんだな」
「隙ありぃぃ!」
「くはっ!?」
ぽふん……と、頭に手刀が乗せられた。
うん、ぽふん……と。
「リアクションしづらいわ!」
「ちっ、つまらん」
「いや、そうじゃなくて! おまえの趣味は……いわゆる、オタクだよな」
「違う! アニメ鑑賞とマンガの読書とギャルゲーと出演声優や作画の判断と批評だ!」
「思いっきりオタクじゃねーか!」
「うるさい! どいつもこいつもそう言ってバカにするんだ! 偉大なる尊重すべき、日本の誇りであるアニメ文化やマンガ文化をロクに知ろうともせずに、ただの偏見と先入観で偉そうにな! わたしはそれがどうしても許せないんだ!!」
「うおっ……」
ようやく本題に達したのに。
白石は激昂し、オレを押し倒してきた。
「おまえたちに何がわかるって言うんだ! わたしたちが住んでいるこの日本の財だって! 外国の人たちに尊敬されている文化だって! 絶対アニメが絡んでいるんだ! だというのにっ……ただ幼い頃になんとなく見ていただけのやつがなんでバカにできるんだ!」
「白石、あのさっ……!」
「黙れ! どうせ二の句には偏見しか語らないくせに!」
「聞けよッ!」
「っ……!?」
思わず大きな声を上げてしまった。現に白石は、おびえた瞳をしている。
沸き上がる罪悪感を押しこらえて、オレは自分の正直な意見を彼女にぶつけたい。
だから、その見開いた瞳をじっと見つめて口を開いた。
「まず。今のおまえの思いだって、結局は偏見じゃねーか。お互い様だろ」
「くっ……だが!」
「だから聞けって」
今一度怒る白石を咎め、話を続けた。
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