Episode1.さくら色な乙女のスガオ

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「偏見が偏見を生んでるんじゃ、悪循環だな。だけどさ、たとえおまえのような趣味に理解はなくても、受け入れてくれる人はいるんじゃないのか?」 「そんなの綺麗事だ」 「違う」 「なに……?」 白石は睨みつけてくる。 だがオレは、ひるまなかった。その必要はないんだ。 「いいと思うぞ、オレは。おまえの言う通り、アニメやマンガって日本が誇れる最高の文化だしな。それにオレも、マンガは好きでよく読んでるから」 「……」 「つまり、日本人=オタク嫌いかオタクっていうのはないんだよ。どっちでもない人だっている。わかるな?」 「そ、そんなことくらいわかってる」 「じゃあなんで、それもわからないのに勝手に決めつけてるんだ? おかしいだろ、そっちの方が」 「……信じていた仲間に裏切られた気持ちなど、おまえにわかるものか」 「え?」 彼女は急に表情に翳りを見せた。 なんだ? つまり、白石が決めつける理由って、それが関係しているってことか? 「……もういい。わたしは帰る」 「あ、おい」 ところが訊く間もなく、白石はオレの上から離れ、無造作に捨てられていた自分の荷物を拾った。 「……黒崎 一馬」 「なんだよ?」 「おまえは……裏切るか?」 「それを判断するのは、オレじゃなくて友達のほうだろ?」 「……そうか」 白石は、ゆっくりと廊下を歩いていった。 「白石……」 美しく、誰にも嫌われない八方美人。 だが、彼女の心の裏にひそむ闇や傷は、とても大きなものみたいだ。 「……そうそう、忘れ物してたんだったな」 思い出し、オレは教室を目指した。 だが脳裏には、彼女の悲しげな表情が焼き付いてしまっていた。 「……オレに、なにかできることはないのかな」 あいつと友達だったら、してやれないことはないのにな……。
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