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翌日の午後。
退屈な授業を聞き流しながら、昨日を思い出していた。
『……信じていた仲間に裏切られた気持ちなど、おまえにわかるものか』
『おまえは……裏切るか?』
裏切り……か。
「ん?」
そんな折。
後ろから小さく折り畳まれた紙が飛んできた。
誰のものか気になるが、あいにく最前列なので振り向くのも困難だ。
振り向くのを諦め、その紙を開いて中を見た。
そこには、綺麗な硬筆でこう記されていた。
“放課後、屋上にて待つ”
「果たし状かよっ」
溢れるツッコミ精神をなんとか抑えて声を極力小さくし、ツッコミを入れた。
え、心でツッコめ? 無理でしょ、こんな高度なボケに対して。
っていうか、マジで名前も何もない。あの一文だけ。
お、オレ、ケンカ売られるようなことしたかなぁ……。
「はぁ……」
なんだか気が重い。
ケンカなんて勝てた覚え、ねーよ……。
「おい、どうした?」
頭を抱えたオレを不審に思ったのか、隣の貴臣がひじでつついてきた。
「貴臣、この十数年間、楽しかったぜ……ありがとな」
「頭大丈夫か?」
「いや、至って正常だ」
「そうか。いい精神科が見つかるといいな」
ひでぇ、普通にひでぇ。
オレは今生の別れを先に告げただけなのに……。
「んふふ、二人ともー。なんのお話しをしているのかなぁー?」
「で、結局それ、なんだ?」
「果たし状」
「赤星くーん、黒崎くーん?」
「今時果たし状とか来るもんなのかよ」
「実際来てるんだよ」
「赤星ぃー? 黒崎ぃー?」
「なんだようるさいな、今大事なっ……」
貴臣につられて前を向くと、そこには目が笑っていない冷たい笑顔の、あの鬼教師がいた。
「い゙っ……」
「うげっ……!」
言い訳の模索で頭を回転させていると。
「んふふー」
鬼教師はオレたちの頭を掴み。
「はい、どーん!」
力一杯、頭同士をぶつけさせた。
鈍い音が頭に響く。
「「いってぇぇぇぇっ!!」」
同時にオレと貴臣の断末魔の叫びも、教室中に響き渡った。
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