プロローグ

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それは、春の暖かな陽気に包まれたある日の午前。 今日は、人生に一度の晴れ舞台(らしい)、高校の入学式だ。 とはいえ、共働きの親は仕事で来れない。あまりらしくない入学式だ。 「一馬、なにボーッとしてんだよ。学校も一新した新学期早々に寝ぼけてんのか?」 「まあ、それもあるかもな」 オレは黒崎 一馬(クロサキ カズマ)。 そして、オレの隣で一緒に歩いているのは、幼馴染みの赤星 貴臣(アカホシ タカオミ)。同級生だ。 「いやー、それにしても、俺たちもとうとう高校生かー。なんか、今までと全く違う制服着ると実感が湧くなぁ、こう……ひしひしと。な?」 「高校生になったからって、対して変わんないだろ。今までと」 がらりと変わるなんてどこのマンガの世界だよ。 「いや、変わるぞ。まずゲーセンにいれる時間が延びた」 「今までも見た目判断通って普通にいたよな」 「通学路が一新した」 「しかし時間が変わっていないのは皮肉な話だよな」 「べ、勉強が余計に面倒になる」 「勉強の欠片もしないヤツがなに言ってんだ」 「新しい出会いがある!」 「なお、いない歴=年齢な模様」 はい論破。 「おい、一馬……。新生活となるのに、なぜそこまでドライなんだ? もっと、若さを引き出そうぜ? ワクワクしようぜ?」 「まあ興味がないわけじゃないんだが、乗り気じゃないというかなんというか」 「それおかしい。絶対おかしい」 「誰もが楽しみなわけじゃないだろ。そういうもんだよ」 なんて説明すればいいのかわからないが、とにかくそんなわけであって。 「ふーん、そんなもんかねぇ……。でもさ、楽しみにして損はないだろ。盛り上がろうぜ?」 「善処する」 さて、そうこうしている内に、まもなく校門だな。 「……ん?」 「おっと……。急にどうしたんだ?」 「…………」 オレたちの逆方向からやって来る通学生たち。 一人で走る者もいれば、友達同士で談笑しながらやって来る者もいる。 そのどれもがありふれた風景なのだが。 ――――オレの視線は、ある一点に注がれていた。 「だからどうしたんだって……ん?」 そのありふれた風景から明らかに逸脱したそれ。 空から降り注ぐどの光よりも。 周りに咲き乱れるどの桜よりも。 ――――その少女は、とても美しく、神々しかった。 「すっげー……美少女ってマジでいるのな」 「……」 一瞬の内に、オレは彼女の虜にされた。
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