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大きく綺麗な、漆黒の瞳。
高すぎず低すぎない鼻。
ぷるりとした艶やかな薄桃の唇。
それらを引き立てる、陶器のように白く、透明な肌。
そして美しい黒髪は腰辺りまでととても長いが、風に煽られて舞うその様子だけでも、手入れがとても行き届いていることがわかる。
さらに彼女は、容姿だけではなかった。
ふと、こちらと視線が絡んだとき、彼女は礼儀良く会釈した。
そして顔を上げると、美しい笑顔だった。
「あ……どうも」
対してオレは、ぎこちない会釈にぎこちない笑顔。なにやってるんだか。
彼女は手を振り、校門へと入っていった。
「おはようございます」
「はい、おはようございます」
その時に聞こえた彼女の透き通るような声。
まさしく彼女は、女神だった。
「おい一馬、あれはなんだ? 人間なのか?」
「ま、まぁ……人間だろうな」
「現実にあんな子がいるなんて、俺、夢でも見てるのkいでででで! 何しやがる!?」
「ゆ、夢じゃないみたいだな……」
「てめぇ、マジでひねりやがって……千切れるかと思ったぞ!」
「おまえの頬なんて微塵の価値も無い」
「ひでぇ……」
いかん、こんな茶番している暇はねぇ。
「あの子、どこ言った……?」
「あ、おい、一馬!」
オレは、人混みを避けて校門の前に走った。
「……いない」
「一馬、おまえ早ぇよ」
「見失ったか……」
あーあ、千載一遇のチャンスを逃した……。
「……あとからまた、探さないと」
「一馬、おまえさっきからなにボソボソしゃべってんだ?」
「あの子を探す。それだけだよ」
「はあ? おまえ、マジ?」
「大マジだよ」
そうもしないと、またチャンスが遠退いて行くだけだからな。
「なんだよ、おまえもしかして惚れた?」
「んな……いや、そうかもな」
「マジかよ」
きっとそうだ。
オレは、あの一瞬で彼女に惚れたんだ。
「君たち。入るのなら入って」
「あ、あぁ……」
どうやら、いた位置が邪魔だったようだ。
校門をくぐり、もう一度心に決めた。
「絶対見つけるからな」
それが、オレとあいつの出会いだった。
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