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あっという間の一年だった。
しかしその中で、オレが彼女に接近する隙は、全く無かった。
まず、彼女とオレはクラスが違った。
次に廊下で見かけても、彼女からうかがえる、周りへの牽制的なオーラのおかげで近寄ることが叶わず。
さらに、彼女は一躍、校内の有名人となっていた。“校内最高美少女”として。
それはオレには逆風で、近寄れば周囲から何を言われたかわかったもんじゃない。
とても近付けられなくなっていた。
そうしている内に、一年が過ぎてしまっていた。
「あー……ちくしょー……」
「なんだよ新学期早々に……って、まさか諦めきれていないのか?」
二年生となり、初めての登校日。
新一年生の入学式もかねての日なため、見慣れた校門は着飾られ、一年前のこの日に見た風景と化していた。
「? お兄ちゃん。一馬さん、何かあったの?」
「あー、まあ、なんだ。惚れた女にアピール出来なくて嘆いているんだよ」
「あ、え、そ、そうなの?」
さて、この見慣れた通学路で、一年前と何が違うかと言えば。
「姫乃ちゃん、気にしないでくれ」
「え、あ、は、はい……」
オレと貴臣のむさ苦コンビに、華が添えられたことか。
「誰にだっていろいろあるってことだよ」
「はぁ……」
よくわからないのか、小首をかしげている。
この子は赤星 姫乃(アカホシ ヒメノ)ちゃん。貴臣の1コ下の妹。
自己主張が乏しくて、少々内気な女の子。
栗色のショートカット、ピョンと伸びたアホ毛が可愛らしい特徴だ。
瞳はクリクリとしていて、やや茶色がかっている。肌は透き通った白だ。
あまり背は高くない。華奢でほっそりとしたからだ付きだ。
「新入生はこちら……。お兄ちゃん、一馬さん、わたしはこっちみたい」
なんて説明している間に、校門をくぐっていた。
新入生と在校生のクラス発表の紙は、校舎が違うためそれぞれ別の場所にある。
そのため、ここで姫乃ちゃんとはいったんお別れだ。
「あぁ、そうか。気を付けろよ。何かされたらすぐ兄ちゃんのとこに来いよ」
「あ、うん、わかった」
「姫乃ちゃん、気を付けてな」
「はい、ありがとうございます」
姫乃ちゃんは、そう言って新入生校舎へ歩いていった。
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