Episode1.さくら色な乙女のスガオ

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あっという間の一年だった。 しかしその中で、オレが彼女に接近する隙は、全く無かった。 まず、彼女とオレはクラスが違った。 次に廊下で見かけても、彼女からうかがえる、周りへの牽制的なオーラのおかげで近寄ることが叶わず。 さらに、彼女は一躍、校内の有名人となっていた。“校内最高美少女”として。 それはオレには逆風で、近寄れば周囲から何を言われたかわかったもんじゃない。 とても近付けられなくなっていた。 そうしている内に、一年が過ぎてしまっていた。 「あー……ちくしょー……」 「なんだよ新学期早々に……って、まさか諦めきれていないのか?」 二年生となり、初めての登校日。 新一年生の入学式もかねての日なため、見慣れた校門は着飾られ、一年前のこの日に見た風景と化していた。 「? お兄ちゃん。一馬さん、何かあったの?」 「あー、まあ、なんだ。惚れた女にアピール出来なくて嘆いているんだよ」 「あ、え、そ、そうなの?」 さて、この見慣れた通学路で、一年前と何が違うかと言えば。 「姫乃ちゃん、気にしないでくれ」 「え、あ、は、はい……」 オレと貴臣のむさ苦コンビに、華が添えられたことか。 「誰にだっていろいろあるってことだよ」 「はぁ……」 よくわからないのか、小首をかしげている。 この子は赤星 姫乃(アカホシ ヒメノ)ちゃん。貴臣の1コ下の妹。 自己主張が乏しくて、少々内気な女の子。 栗色のショートカット、ピョンと伸びたアホ毛が可愛らしい特徴だ。 瞳はクリクリとしていて、やや茶色がかっている。肌は透き通った白だ。 あまり背は高くない。華奢でほっそりとしたからだ付きだ。 「新入生はこちら……。お兄ちゃん、一馬さん、わたしはこっちみたい」 なんて説明している間に、校門をくぐっていた。 新入生と在校生のクラス発表の紙は、校舎が違うためそれぞれ別の場所にある。 そのため、ここで姫乃ちゃんとはいったんお別れだ。 「あぁ、そうか。気を付けろよ。何かされたらすぐ兄ちゃんのとこに来いよ」 「あ、うん、わかった」 「姫乃ちゃん、気を付けてな」 「はい、ありがとうございます」 姫乃ちゃんは、そう言って新入生校舎へ歩いていった。
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