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「あー……ダメだ、心配すぎて歩けねぇ」
「とは言え、歩かなければ遅刻となる」
「くそ、揚げ足取りやがって……」
オレの腐れ縁な幼馴染み、赤星 貴臣は、重度のシスコン。
事あるごとに妹を心配し、妹と比べたりする。
おそらく姫乃ちゃんは、内心では呆れているだろうが、それを受け止めているようにうかがえる。
「ほら、行くぞ」
「う……わ、わかったよ」
半ばムリヤリ貴臣を現実に連れ戻し、オレは校舎へと向かった。
「それにしても。やっぱ、ある意味で決戦だよな、この日って」
貴臣がそう言う。
目の前には無数の人だかり。そのすべてが熱い視線を注いでいるのは、クラス発表の掲示紙。
貴臣の言うことは、あながち間違いではないだろう。
「見えるか?」
「んー……なんとなく」
オレは視力は悪くはないが、なんせ人が多い。
ぎゅうぎゅうに押されながら、上から確認するのは容易いものではない。
「お、お、お」
どんどん人混みが進んでいく。
合わせて、オレと貴臣も前へ進んでいる。
「お、見えた! 一馬、皆勤賞記録更新だ」
「クラスは……2ーC」
ようやく見えた紙には、そう記されていた。
オレと貴臣は、やはり腐れ縁だった。
「よし行くぞ、あんま時間がねぇ!」
「あ、おい、ちょっと待て貴臣!」
貴臣は、我先にと人混みを掻き分け、入口へと走っていった。
出遅れたオレは、もう一度紙を見て、驚いた。
「白石……砂羽……!?」
オレの名簿の次の番号に、そう確かに記されていた。
「こうしちゃいられねぇっ」
オレは、一目散に人混みを掻き、入口へ急いだ。
……会える! しかもそれどころじゃねぇ……!
「やっぱ、諦めなくて正解だったか!」
意気揚々に、オレは先を急いだ。
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