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2ーC教室に着くと、廊下にはまたしても人だかり。
こいつらのお目当ては、言うまでもなく“校内最高美少女”だろうな。
「ごめん、ちょっと通して」
人混みを掻き分け、なんとか教室にたどり着き、座席表を確認した。
縦×横が7×6の机列びになっており、オレは窓側から二列目の先頭だ。
そして後ろには、彼女の名前があった。
「……よっしゃ」
オレは小さくガッツポーズをした。
席に着こうと振り向くが、どうやらオレの席は無いようだ。
「ねぇ、白石さんの趣味ってなあに?」
「趣味ですか? 趣味は、マン…………読書です」
「どんな本読んでるのー?」
「ど、どんなと言われても……さ、様々な分野のものですよ。ほら、ミステリーとか、純愛とか」
彼女は怒濤の質問攻めにあっている。
オレの席は、質問している他の女子にあっさり取られていたんだ。
「ねぇねぇ白石さん、好きな男の子とかいるの?」
とたんの質問。オレの耳が釘付けとなった。
「えぇ!? そ、そんなの急に……」
「いいから教えて? いるかいないか、イエスかノーでいいから」
なぜだ。なぜこんなにオレが緊張しているんだ?
「は、はぁ……。い、いませんよ。物語として恋愛ものはよく読みますけど、そういったことにさほど興味がないから」
で、ですよねー……。
って、だからオレ、なんでこんなに反応してるんだ? わずかな期待か?
んなの毛頭もないことはオレが一番わかってんだろうが……。
「えー、うそー!? 白石さん絶対モテるでしょ? なのに興味ないの!?」
「も、モテるかどうかは別として、わたし自身は、本当に興味がないんです」
あー……なんだろ。いまの彼女の言葉が、結構グサッとくるんだが。
「……って、こうしちゃおれん」
なんて落ち込んでいたが、取られている席を取り返さねば。
「とはいえ……なぁ」
とても、あんなに見事な女の園に近付けない。
近付いただけで犯罪者扱いとか、最近はざらにあるらしいし。
まあ、女の方が、被害妄想が過ぎるだけかもしれないが。そういう事例は。
「……まあいいか。時間が来たら、勝手に散らばるだろ」
今日は入学式もあるんだから、教師が静めてくれるはずだ。
そう祈りつつ、オレは窓際に行こうとした。
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