Episode1.さくら色な乙女のスガオ

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「んで、結局諦めるのか」 まだ日も高い昼。 始業式を終えたオレと貴臣、姫乃ちゃんは、朝も通った通学路を今度は復路として通っている。 道中、オレは貴臣に、彼女への想いについて話し、問いにうなずいた。 「まあ、賢明か」 「一馬さん、その……」 「ん?」 「……ど、どんまいです」 「……うん」 「あ、あれ?」 「逆効果」 「そ、そんなぁ……」 いいんだいいんだ……オレなんてどうせ、オレなんてどうせ……。 「姫乃ちゃん、ありがとね」 「あう、あの、ご、ごめんなさい……」 「ううん、気にしないで」 「わ、わたしがデリカシーのないばかりに……」 「いいって。お願いだから泣かないで」 「で、でもぉ……」 だめだ、止められない。すでに姫乃ちゃんの瞳に涙が浮かんでる。 「一馬、アレだ」 「仕方がないか」 こうなったときの最終手段は、ただひとつ。 「姫乃ちゃん、あとでクレープ奢るよ」 「うぅっ…………え、ふえ? くれーぷ?」 「うん、クレープ」 そう言うと、姫乃ちゃんの曇った表情はみるみる晴れて。 「えへへへ……くれーぷ、くれーぷっ」 満点で満開な笑顔の花が咲きましたとさ。 この単純さは時にありがたいけど、申し訳なくもあったりする。 「ところでよ、このあとどうする?」 表情ほころぶ可愛らしい姫乃ちゃんに呆れていると、貴臣が話を切り出した。 「どうするもなにも、姫乃ちゃんにクレープ奢らなくちゃならなくなったからなぁ。このまま昼飯も一緒に行くか」 「そうだな。姫乃もそれでいいな?」 「くれーぷ、くれーぷ、くぅれぇーぷ♪」 あいにく姫乃ちゃんは聞いちゃいなかった。 「大丈夫だとよ」 「へぇ、オレにはくれーぷとしか聞こえないのによく聞こえたな」 「兄貴をナメるな」 ドヤ顔してそう言ってくる貴臣だが、全然羨ましくないという真実。 「いつものとこでいいよな」 「異論はない」 そうして、くれーぷの歌(仮)を歌っている姫乃ちゃんも連れて、行きつけのファーストフード店へ行くことになった。 余談で、しかもその後の話だが。 姫乃ちゃんの選んだクレープは、大きさも値段もビッグなものであり、オレの懐が余計に寂しくなったことは伝えておく。 ……しばらくクレープがトラウマになりそうだ。
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