紅の暗殺者

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東雲と伊助、この二人の攻防は暫くの間、収まる気配はない。やり取りを目で追いながら、青年ーー原田はゆるりと首を傾げた。 「何だ? アイツら、知り合いなのか?」 「そのようですねぇ。まあ、芹沢さんとも知己のようでしたから」 芹沢という名に原田は目を見開く。厄介な事に巻き込まれたという、気持ちが渦巻き何とも言えない表情を浮かべた。 「おいおい。芹沢さんの許可、取ってんのかよ……」 「あはは、取ってる訳ないじゃないですか。芹沢さんがこそこそ会ってる人ですよ? それにあの腕っ節の良さ。あの人、一体何者なんでしょうかねぇ?」 沖田は嬉々として、伊助を締め上げる東雲を見つめている。厄介な奴に目を付けられたな、と原田は嘆息を漏らす。 沖田は良くも悪くも、強者に敏感だ。 敬愛する局長の近藤の為に振るう力を鈍らせない為に、邪魔者を排除する為に、どうしようもなく強い輩を求めてしまう。 それを駄目とは言わない。だが、自重はしてほしい。巻き込まれるのは、大概此方なのだから。 砂利を踏み締める音が次第に近付いてくる。原田は思考を打ち切り、顔を上げた。 「あれ? 何か騒がしいと思ったら、喧嘩?」 「伊助、とありゃ誰だ?」 外出から戻ってきた、小柄の青年と総髪姿の青年が同時に口を開く。原田は視線を二人に向けて、軽く手を振った。 「伊助の知人らしい。丸腰で浪人を叩き伏せたとかで、連れてきた」 総司がな、と原田が指差せば二人はああ、と頷きを返す。 「また、沖田くんの悪い癖かぁ……」 「捕まった奴は災難以外の何物でもないよな。土方さんに、伝えとかないでいいのか?」 「こんだけ騒いでんだ。否が応でも気付くだろ」
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