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「名なんかないよ。それと僕は小僧じゃない。おにーさん。目玉さ、ちゃんと機能してるの?」
呆れたように、そう口にすれば場の空気が凍った。
周囲の人間が青年を見れば、青年から笑みが消えている。
人を殺せそうな程に冷えきったその瞳にゾワリと肌が粟立つが、不思議と怖いとは思わなかった。
暫し見つめ合えば、青年は声高らかに笑う。
「良い度胸してるな。この俺に強気な態度を示してくるとは。童、死にたいのか」
「さあね。一応生きたいとは思ったけど、僕には夢も希望も何もない。あるのは、嫌な烙印だけだし」
「……何?」
青年はそこでようやく、自分の髪色に気付いたようだった。汚れた布で隠していたそれは、不気味な程に赤い。
それは不吉とも呼べる一族の証――
「成程。貴様“あの一族”の生き残りか」
そうだとも違うとも言わなかった。確かに、一族の血を引いてはいるが、誇りなるものは持っていない。
これからどうするか。考えるのはその一点のみだ。
「貴様。何が出来る」
「は?」
上手く聞き取れず、聞き返せば青年の眉間に皺が刻まれる。ピリッと肌を刺す殺気が、何処となく気持ち悪い。
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