118人が本棚に入れています
本棚に追加
ダンダンダン、と床を踏み鳴らす音が響き渡る。その足音の主を知っている者からすれば、身を縮ませるような嫌な音だ。
原田達は互いに顔を見合わせ、彼が庭に出て来る前に避難しようとそろそろと動き出す。だが、それを沖田が許さない。
「嫌だなぁ、左之さん。平助、新八さんも。一緒にいましょうよ。仲間じゃないですか」
「離せっ! 総司! 俺は、これ以上巻き込まれたくねえ!」
「右に同じっ!」
「って、俺達は関係ないよね!? 沖田くんと左之さんの判断でしょう!?」
原田と永倉が中心となり、何とかして寄り掛かる沖田を引き剥がそうとするが、なかなか離れてくれない。道連れにしようとする魂胆が見え見えだ。醜い攻防が繰り広げられる中、一人の男性が庭に降り立った。
「総司ィ! てめえ、勝手に出て行きやがってーー……おい、何を連れて来てんだ」
長い髪を一つに結った美丈夫ーー土方が、東雲達と沖田達を交互に見比べその双眸を細める。
「聞いて下さい! 歳さん! 新たな仲間ですよ!」
「「「うおっ!?」」」
あれ程引っ付いていた原田達をぺいっと押し退け、沖田は土方に駆け寄った。対抗していた力が重力に代わり、三人は無残にその場に崩れ落ちる。
それを横目に、土方は深々と息を吐いた。
「仲間だぁ? また勝手な事を……。第一そいつ優男じゃねえか。どっから連れて来たんだよ」
「先刻、路上で捕まえてきました! 丸腰で浪人達を倒したんですよ。気になりませんか?」
「何?」
土方は眉間に皺を刻んだまま、未だに伊助を片腕で締め上げている東雲を見据えた。普通にその場にいる筈なのに、隙が全く見受けられない。
笑っているその表情も、何処か作り物のように見える。もし抜刀し、それを今、この場で彼に振るったとしよう。生き残っているのは、果たしてどちらだろうか。
「面白え」
微かに土方は口端を吊り上げた。
最初のコメントを投稿しよう!