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米俵のように担がれ馬に乗せられた。痛い程の視線と、揺れる視界に酔いそうになる。
目前に見えるのは地面と、馬の足。蹄が土を蹴るのがよく見え、振動が直に伝わってきた。
自分を前に置き手綱を握る彼は、家臣達の中でも体格が良い方らしい。チラリと横に目を移せば、先程声を上げた青年と目が合う。
鋭く睨まれたが、全然怖くない。むしろ構いたくなった。自由になったら悪戯してやろうか。
そんな事を考えながら顔を緩く上げ、手綱を握り走り続ける青年へ視線を移す。
ジッと見据えるが、此方を見ようともしない。存在を消し、荷物同様の扱いされているような気がする。
「なぁ、アンタ」
「…………」
「聞こえてる? おーい」
「……何だ」
溜め息と共に吐き出された声は、思っていたよりも低い。胡乱げな目付きで、自分を見つめてくる青年に笑い掛けた。
「さっきのおにーさん、信長って言うの? 何処の殿様?」
疑問を口にしてみたら、驚いたような表情を向けられた。
何か不味い事でも言ったのだろうか。
「……知らないのか」
「知らない。国が沢山あるのは分かるけど、把握してるのは地名ぐらいで、他の事はさっぱり」
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