正論はわがままを通すための盾

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◇◆◇◆  朝の退屈なSHRの時間。普段なら先生から連絡と日直からの一言だけで終わるのだが、今日だけはいつもとは違っていた。 「……今なんて言った……?」 誰かが、ふとつぶやく。俺はそれを聞き逃さずに、首を傾げながら答える。 「Aクラスが天狗になってやがるから試召戦争でその鼻へし折ってやらないかと提案したんだが?」 『ふざけんな!勝てるわけないだろ!?』 『バカじゃねぇの!?』 『そんなに暇じゃないのよ!?』  俺に対して飛んでくる罵声の数々。あまりに予想通りの反応だ。俺はこみ上げてくる笑いを我慢してすまし顔で受け流す。 「それなら、勝つ方法があればやるってことだよな」 そういった途端、いきなりみんな静かになった。うん、正直な人はお兄さんは大好きだぞ。 「ちょっと待ちなさいよ!そんな暇はないって言ってるでしょ!!」 その静寂を破って、騒ぎ出した女子―――中林のせいでクラスのみんながまた騒ぎ出した。あれ?妙に今日は食いついてくるな? 「おやおや、感心しないな中林。クラス代表なのに勉強より部活を優先させるのは学生としてあるまじき行為じゃないのか」 「うぐっ……あ、あんたの動機が不純だから反対しているのよ!!」  ああ、だから反対してるのか。一応責任者として。 「皆が分かるようにこういったんだけどな……実際今日馬鹿にされたんだよ」 「なんてよ?」 「『Aクラスは何処にも負けない。戦っても話になるわけない。今回はFクラスに不覚にも苦戦したけど、普通にやれば余裕だ』ってね」  若干嘘だけど。 「?Eクラスのことなんて一言も言ってないじゃない」 「言われてないことが問題なのさ。これは暗に、Fクラス以外は眼中にないって言ってるんだよ。詰まるところ、現状じゃEクラスは学年最低だとね」 「「「!!?」」」  皆の目が驚愕と憤慨の色に染まった。 「俺は別にそう思われても構わないと思ってるけど、皆は違うだろ」 「「「……」」」 今度こそ反対意見は沈黙したので、俺は実際のプランの説明に移ることにした。 「んじゃ、説明に入るからよく聞けよ。だらだらやって時間を無駄にしたくないならな」
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