早起きは三文の徳とは限らない

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◇◆◇◆ 『開戦だ!野郎どもこの勝負死ぬ気で勝つぞ!!』 『『『おお!!』』』 昼休み終了の鐘が鳴ると同時に、老朽化した壁越しにFクラスの気合の入った野太い声が聞こえた。そのせいでクラスの一部の奴らは不快そうに顔をしかめる。 「……まったく、バカなFクラスが新学期早々上位クラスに勝てるわけないのにあんなに騒いで……」 「そうよね。あのクラスは本当にバカなのかしらね」  俺の前に座っている中林が隣の女子、古河あゆみに話しかけていた。 午前中にクラスの役割や席を手早く決めた俺たちは今日の残りの時間が自習となり、担任の先生は回復試験の採点のために駆り出されているため今はここにいない。 授業もなく先生がいないのをいいことに、クラスメートたちは放課後の部活のために昼寝をしているか、試召戦争について話しているかの二手に分かれ、勉強しているものは誰もいない。 かくいう俺もその一人なのだが。 「いや、中林。案外Fクラスが勝つかもしれないぞ」  中林と古河の雑談に口をはさむ俺。中林はいきなり後ろから声をかけられたからか不快そうに、古河は俺の言葉の真意を測りかねて訝しむように俺に目をやる。 「それってどういうことよ変態」 「どういうこと、水無月君」 「まず口のきき方を一から学び直して来い中林。……二人とも六年前に水無月小学校に神童がいたって話聞いたことないか?」 「え?あぁ、聞いたことあるよ。たしか私たちと同年代だったよね」  いきなり関係のない話を振られて二人ともきょとんとした表情になるが、思い出したかのように古河が答えた。 「そう、その神童は俺たちと同年代だ。昼休みに確認して知ったんだが、その神童が今年のFクラスのクラス代表だった」 「あんたバカなの?そんな神童なんて言われるやつだったら普通Aクラスにいるじゃない」 「神童と呼ばれていたのは過去の話だ。神童と呼ばれたあいつ――――坂本雄二は勉強をしなくなったからFクラスにいるんだろう。……まぁ、あいつの場合わざと手を抜いたのかもしれないがな」
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