585人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなこんなで名門高校サッカー部での実績を経て、プロサッカーの世界へと足を踏み込んだ彼が見た世界。
それは共に戦う仲間ではなく、個人プレー主義の集団だった。
彼が所属したのは、良い言い方をすれば「地元密着型」のチーム。
しかしその実態は、税金対策の片手間事業だった。
そこそこの仕事さえしていれば、怪我や問題を起こさない限り契約を切られる事はまず無い。
ベテランからしてみれば細く長く生きる道。若手からしてみれば他チームのスカウトへアピールする為の踏み台。
もちろん万年最下位独走のダメチームだが、しかしそれ以上に「チームの為に」という思考が、そこには存在しなかった。
所属したチームがたまたまだったのだろうと、割り切ろうともした。
しかし今が全てだった。
結果として彼は絶望し、目指すべき目標を見失った。
こうして、大して試合を重ねる事も無くサッカー界から身を引いた彼は今、暇潰しにブラブラしてた。
目的や行く当てなど無い。
無職という事もあり、これが彼にとっては日常になった行動の1つだ。
最初のコメントを投稿しよう!