第02章 出逢

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そんなこんなで名門高校サッカー部での実績を経て、プロサッカーの世界へと足を踏み込んだ彼が見た世界。 それは共に戦う仲間ではなく、個人プレー主義の集団だった。 彼が所属したのは、良い言い方をすれば「地元密着型」のチーム。 しかしその実態は、税金対策の片手間事業だった。 そこそこの仕事さえしていれば、怪我や問題を起こさない限り契約を切られる事はまず無い。 ベテランからしてみれば細く長く生きる道。若手からしてみれば他チームのスカウトへアピールする為の踏み台。 もちろん万年最下位独走のダメチームだが、しかしそれ以上に「チームの為に」という思考が、そこには存在しなかった。 所属したチームがたまたまだったのだろうと、割り切ろうともした。 しかし今が全てだった。 結果として彼は絶望し、目指すべき目標を見失った。 こうして、大して試合を重ねる事も無くサッカー界から身を引いた彼は今、暇潰しにブラブラしてた。 目的や行く当てなど無い。 無職という事もあり、これが彼にとっては日常になった行動の1つだ。
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