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死だ。
私は死んでいた。
あれから半月、何人かの人達が施設に近づいたけど、私は彼らを排除しなかった。
彼らは不思議そうな顔で立ち寄り、死体に驚き、落ち着いたころに金品を漁ってどこかへ行く。
私はそれを黙って見ているだけ。
いや、見てすらいなかったかもしれない。
あの日、私はどうやってか、言い付けを強引に破って、何の理由も無く彼に発砲した。
本来ならば適切な手順を踏まないと行動に移れない私が、重ね重ね言い付けられたことを無視したのだ。
けれど弾丸は彼には直撃せず、彼の首の皮を一枚掠めただけだった。
百発百中の火器制御システムと数百テラバイトの計算処理速度がある私が外すなんて、これもありえないことだった。
私は何をどうすればいいのかわからなかった。そうこうしてる内に彼は、施設を出た。
後で自己診断プログラムを使って分かったことは一つだけだった。
彼が念の為、私の火器制御システムをハッキングしいたのだ。プログラムをめちゃくちゃに書き換えたのだ。
自動でプログラムは最適化されるのだけど、どうにも彼の方が一枚上手だったらしい。
厳重なセキュリティーが私にはかけてあるけど、直接ノートパソコンをいじっていた彼なら簡単なことだった。
分からないことは二つだった。
彼が去った理由。私が彼を撃った理由。
後者は、撃てた理由、とも言える。私は言い付けを破ったことはないし、破れる訳がない。
それに全ての計算処理を回してるから、カメラもセンサーもレーダーも。
警備システムもぜんぶ、ぜーんぶ、OFFにしていた。
全ての電力と計算処理をひたすらにたった二つの難題につぎ込んでいた。
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