Pain

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そしてその時、私のレーダーが小さな熱源を一つ探知した。 大きさと速度から察するに駆動二輪。バイクだ。 全ての迎撃兵器が再装填中だから、そのバイクを今直ぐに破壊することはできない。 それに普通のバイクには電子機器が付いていないから、EMP兵器で止めることもできない。 直ぐにバイクは私の施設に近づくと、人が降りる。 カメラで確認すると、それは、あの彼だった。 独りぼっちの私に仕事をくれた彼。 一ヶ月と数日、私と一緒にいてくれた彼。 私が、撃ち殺そうとした、彼。 彼はIDカードを使って扉を通り、慣れた様子で真っ直ぐに私のある部屋までやってくる。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 殺そうとして、ごめんなさい。 私は謝ろうとしたけど、それはノートパソコンの液晶の弱々しい光にすら表れない。 彼はUSBをポケットから取り出して、私に差した。 自動的にソフトが起動する。 ―― これは、修正プログラム? 彼が私を操作してどんどんアクセスを許可していくと、最終的には私の情報整合プログラムに干渉してくる。 そして物凄い速さでプログラムを書き換えていく。 私は気が付いた。プログラムが、おかしかった。 最初からプログラムがおかしかったのだ 私には、"正しい"と思うプログラムが無かった。 いや、そんなはずはない。最初の頃は普通にみんなと暮らしていたはずだった。 誰かが書き換えたに違いない。一体誰なのかは、今となっては予想のしようもないけれど。 彼は、この修正プログラムを作る為に帰ったのだろうか。 いや、違う、彼は逃げるといった。 では、どうして戻ってきたのだろうか。 彼は笑顔で微笑んで、私と巨大な機械を繋いでいるケーブルを引き抜き、ヤツらから逃げるぞ、と言った。 なんだ、そんなことだったのか。 なら。私は恋はしないけれど、仲良くなることはできる。 彼が安らかに眠るその日まで。 彼の子供が目を閉じるその日まで。 彼の子供の子供が私を欲するその日まで。 私は無限に響くコーラス。 私は目覚めた。機能は正常ではなかったけど、気分はとても晴れ晴れしている。 私に気分は、無いけれど。
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