Intelligence

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1時間後。彼は施設内の厨房にいた。 結局私は、彼を特別訪問者、端的に言えばゲストとしてID登録した。ちなみにコードは167桁だから、割愛。 施設長が不在だからそれらの権限は全て私に回ってきている。 もちろん、本当は優先順位は上から7番目くらいだけど、その6人全員がいないから、私なのだ。 そして悩みの種の彼はというと、厨房にある冷蔵庫や備蓄してある保存食を食い散らかしていた。 これも本来なら警告、排除に相当するのだけど、ID登録の作業をしたことが初めてで、それに言い付けも全く無い。 あれやこれやと、予め設定されているシーケンスとプログラムで適当に処理したせいで、彼にも結構な権限が乗っかってしまった。 彼の身なりは随分と貧相で、少なくとも今まで私が見てきたことがないくらいにぼろぼろの服を着ていた。 髪はぼさぼさで、今はいくらか改善してるものの、やつれた顔をしている。水も先程、2リットルをがぶ飲みしていた。 私は現在の備蓄量と今の居住人数を照らし合わせて、あと何日食料が持つのかと計算したけど、後三ヶ月はもちそうだった。 それもそうだ。元々大人数が働いていた施設の備蓄で、たった一人をもてなしているのだから。 それからさらに3時間後。彼は一通り施設を見て回り終え、最後に、"私"を見つけた。 彼は小さなノートパソコンを見つめながら、ほほうと唸る。 これが私だった。このノートパソコンは私のために作られたものだ。 ウィルスの感染を防ぐ為にインターネットに繋げていない、スタンドアローン状態。 ノートパソコンは巨大な機械にケーブルが繋がれていて、それは73本のケーブルを奥にある部屋、スーパーコンピュータールームへと繋がっていた。 彼は私を見つけるなり、近くにあったキーボードをUSB差込口に差し込んだあと、私を操作しだす。 本来は一日に一度あるメンテナンスのときにだけ使われるのだけど、暫く誰も触れてなかったから、少しだけ埃が積もってた。 操作を始めてから1時間。彼は状況を理解したのか、私の"眼"を見た。 私も彼をじっと見つめ返した。彼の手馴れた操作から察するに、彼はソフトウェア系の技術者らしかった。 特に小難しいプログラム関係の呑み込みが早かったから、どうにもITドカタという人種だと推測する。 それなら貧相な身なりの説明もつく。何故、こんな荒野をうろついてたのかはわからないけど。
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