如月。

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(試しに書いてみた。 描くのは明日) ――嗚呼、また来た。 不定期に訪れるこの感覚に、今も慣れることはないけれど、 "それ"の訪れる時は分かるようになってきた。 ぐらりと視界が揺らぐ。 私は思うように動かない体を何とか動かし、隠れる場所を探す。 誰にも見つからないように。 誰も巻き込まないように。 私の安全と他人の安全を確保するために。 絶え間なく襲いかかる、体の中で何かが暴れる感覚。 初めての時は何が起こったか分からないまま気を失い、反動で数日動くことができなかった。 こうした今も、まだ何とか対処できる程度だけど。 早く"これ"を出してしまわなければ。 人目のつかない場所に座り込み、壁にもたれかかる。 息は荒いけれど、大丈夫、言葉は紡げる。 『手に……握った石が壊れる』 『落ち葉がくるくる舞う』 この時の言葉は十分に選ばなければ、あるいは詳細に語らなければいけない。 たとえ意識が朦朧とする中でも。 制御できぬ力が誰かを傷付けてしまわぬように。 『――――』 『――――』 言葉にすればするほど、 体の中にいる怪物が吐き出されてく。 それと共に、体力も奪われていく。 "これ"は普段言えずに飲み込んだ言葉なのか。 それとも私の中にある醜い感情なのか。 不定期に、それでも確実に訪れるこの波に呑まれていく。 苦シイ――辛イ――嗚呼―― 彩良の笑顔を思い出したところで、 私はとうとう体を支えきれずに倒れてしまった。 遠くなっていく意識の向こうで、 誰かが私を呼んだ気がした――。image=467518397.jpg
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