第七章

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「まぁー、気長に考えてよ。時間はたっぷりある」 そう言って、先輩はニッコリと笑った。 本当はめちゃくちゃ動揺していたけれど、考える時間を先輩がくれたから、ちょっと安心してコクリと頷くことができた。 それから、先輩は手を伸ばして立て掛けてあった、メニューを開く。 「腹減った、なんか食う?」そう言って、デザートを選び出した。 どうやらもうこの話はおしまいらしい。 その後は、長々とカメラの魅力について私に熱く語り、遅くなったからと駅まで送ってくれた。 帰り道ふと思う。さっき、あれほど熱烈な告白をされた気がするのに、今は微塵も先輩からそんな気配は感じられない。 まぁ、急に甘い言葉言われても、困るからいいんだけど――。その変わらない態度に夢だったのか? とつい疑いたくなる。 でも……、いやらこれは現実だよ。 そう、私に訴えかける出来事が、一つ。 当たり前のように先輩に繋がれた私の右手だった。私よりもずっと大きな手。 その温もりを、心地よいと感じている自分が……、確かにいた――。
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