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「そっか……小学生、最後の夏休みだな……」
「あ、うん……」最後というニュアンスに無意識に声のトーンが小さくなってしまったからか……
「何、寂しいの?」意外な悠ちゃんの問いかけに、ブンブンと強く頭をふった。
「ぜんぜん! 全然さみしくないよ! だって、理子は早く大人になりたいんだもん! だから平気っ!」
「なんで早く大人になりたいの?」
「それはもちろん早く悠ちゃんに釣り合うようになりたいからっ!」
「……」
話の流れが生み出した二度目の私の告白もどきは、見事に無言のスルーだった。
あぁ……やっぱりスルー……、冷めた視線を私に飛ばした悠ちゃんは、小さく息を吐いて踵を返す。あぁっ、置いてかれちゃうっ!
「ゆっ、悠ちゃんっ!」
さらなる必死の叫び声に、悠ちゃんはしぶしぶ足を止めて、チラリと視線だけを飛ばす。無言だけど、悠ちゃんの綺麗な瞳が 何? と訴えている。
見つめられるとなんだか、緊張する。ドキドキと早鐘をうつ心臓。理子はゴクリと唾を飲み込んだ。
「誕生日プレゼントの催促か?」完全に呆れ気味の口調で話す悠ちゃん。理子はブンブンと頭をふった。
「あっ、違うのっ! 何か欲しいとか……そういうんじゃなくて……」
口がカラカラに乾いて、ただでさえしどろもどろなのにうまく話せない。
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