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電話を終えて、イライラしながら、居間に戻ると、ソファにはゆき枝しかいなかった。
「あれ、梨花さんは?」
その声に振り返ったゆき枝は、
「あぁ、理子ちゃんがさっき目覚めたから、部屋に行ってる」
その言葉に俺は返事もせずに慌てて部屋を飛び出した。一気に階段をかけ上がる。
ちょうど廊下の真ん中あたりの理子の部屋のドアが、半分開いたままの状態になっていた。
そっと近づくと、ボソボソと梨花さんと理子の声。何を言っているのかは聞こえない。
俺は右手でそっと開きかけの扉にノックする。
コンコン
「悠です。理子が起きたって聞いて……」
ホントはすぐにでも目の前の扉を開きたい衝動に駆られたが、ここは我慢。理子は病人だし、一応女の子。入るには本人の許可が必要でーー。さっきは眠っていたから許された。
「ちょっと待ってね」
梨花さんの返答の後、ボソボソと理子と話す声が聞こえた。
もし断られたらーー?
立ち直れないな……。なんて思いつつ、数分後。
扉が中から開かれ、梨花さんが出てきた。
「入っていいそうよ。私は下にいるから何かあったら教えてね」そう言って小さく笑みを浮かべた梨花さん。
俺は頷き階段を降りる梨花さんの背中を見送った。
正直ホッとした。入ることを許されたことに。ゆっくりと扉に向き直る。
理子に会うのはーー、俺のアパートが最後だった。
ほんの少し、緊張する。大きく息を吸って、
「理子、入るよ」
そう声をかけて、俺は足を踏み入れた。
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