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「少し、落ち着こっか」今度は優しく声をかけ、ベッドの上理子の正面に座る。
「大丈夫か?」
「……」理子の瞳が揺れている。
「俺の言う意味、わかるか?」理子の顔を覗き込みながら、優しく問いかけると、コク、コクと二回頷いた。
それを確認し、俺は理子を瞳の中に閉じ込める。
「いいか、よく聞いて。俺は、今日はここには泊まらない……。こんな時になんなんだけど、どうしても行かなきゃいけない所がある。でも、約束の時間にはまだだいぶ時間があるし、それまでは一緒にいられる。もちろん、理子がいていい、というならば、だけど……」
ジッと俺の話を黙って聞いていた理子。
「……いて、ほしい」やっと聞き取れるくらいの小さな声で呟やいた。
「わかった」ポンポンと頭を数回撫でてやる
本心をいえば、このまま朝まで一緒にいてやりたかった――、がそれは出来ない。
なぜなら、さっき大野の電話を切った後。俺は隆からのメールに気が付いたんだ。そこには、亜美と連絡がついたとあった。
『今夜23時、BARにて』
このチャンスを、俺は逃すわけにはいかない。
どんなに後ろ髪をひかれても、理子のために俺は行かないと――。
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