第五章

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俺は気を取り直して、小さく息を吸う。そして頭の中でゴングを鳴らした。 「で?」理子の目を見て、問いかける。 「ん?」何が? と言わんばかりに目を丸くしている。 「全部解決した? 理子の疑問は」これは、前置き。 「え、あっと、うん」コクリと頷いたのを確認して。 よし、ニヤリと口角を上げた。 「なら、俺の番な」 「へ?」 「今日、何があったか話して」瞬時に表情が変わる。 「……」 「誰に会った?」 「……」 「何を見た?」 「……」俺から目は逸らさないが、返事もしない。 「……黙秘か?」 「……」 「俺がそれを許すとでも?」 「……」 「理子」 「――――何」さっきまでとは別人のような低いトーン。 「高橋には会ったのか?」俺は理子の表情を少しも見逃さない。 「話したのか? あいつと」会っていて欲しくないという気持ちで、言葉を紡ぐ。理子は視線を落としてしまった。 「会ってない――。それに悠ちゃんが何を言ってるのか、理子にはよくわからない」 へぇ~、言ってくれるじゃん。 そうかよ、ソッチがその気なら……、
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