第五章

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ムッとしつつも、俺はニッコリと満面の笑みを浮かべた。 「そうか、わかんないか……、なら仕方ねーよな。それなら、そうだな……質問を変えてみよう」 「……」理子が複雑そうな顔で俺を見ている。 「俺たちは会うのが久しぶりだもんな。新しい学校はどうだ? 毎日、楽しいか?」 「え……」相当予想外だったのか、間の抜けた表情をしている。 「え、じゃねーよ、楽しいか? って聞いてんだけど?」 「あっ、うん……楽しいよ」 「そうか、それはよかった。新しい友達は? 気の合う子は見つかったか?」 「うん、できたよ……」 「友達の名前は?」 「えっと、絵里ちゃん」 「絵里ちゃんね」名前を繰り返した俺の事を、理子は不思議に思っているに違いない。パチパチと瞬きを繰り返している。 俺は少しだけ理子に近づき、 「あとは? そうだな、学校で困ったこととかはないの?」探る視線に戸惑う理子。 「困ったこと……。ないよ、毎日楽しい」 「そう……なら、学校出た後は?」 「えっ…」一瞬、動きが止まり、さらに顔を近づけた。 「誰かにジロジロ見られたり、何処かで待ち伏せされたり――」 理子が小さく息をのむ。 「何かわたされたり――」見開かれた瞳。 俺から慌てて視線を逸らした。そしてその横顔は、不安そうに見える。
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