7400人が本棚に入れています
本棚に追加
あの手紙はどうしたんだ?
そう言おうとして、理子が先に何か言った。
「え?」声が小さくてよく聞き取れなった。
俺は理子の声に耳を傾け聞きとろうとした。
「ポケットに……」
「ポケット?」
「うん、気が付いたらポケットに入ってたの」
「……」高橋が入れたってことか?
しばしの沈黙……。
「悠ちゃん」おずおずと理子が俺を呼ぶ。
「何?」視線を向けると
「理子ね、今日……駅で電車に乗る直前に誰かとぶつかったの。一瞬だったから顔は見なかったし、相手も立ち止まらずに歩いて行ってしまったけれどーー、男の人だった」
「男?」ソイツが高橋だったのか? 可能性はある……。
「その時は気づかなかったけれど、電車の中でポケットに覚えのない手紙があるのに気が付いて……、どうしても気になって大野君がトイレに行った隙に、こっそり中を見ちゃったの」
「……」
「読んで頭が真っ白になったーー、悠ちゃん理子も、それを書いたのは高橋君だと思う……」
理子の声はかすかに震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!