第五章

124/218
前へ
/974ページ
次へ
頬杖をついたままで、下から俺を見上げるような亜美の視線。 それなのに、何故見おろされてるような威圧感を感じるのだろうか。 綺麗な顔立ちがさらに存在感を大きく見せているようにも思う。 亜美から滲み出るオーラとういうか、そのまとう空気感に、俺は気を許せば飲み込まれそうに感じていた。 「で?」亜美が一言。 「えっ?」俺に鋭い視線を向ける。 「そっちのお願いを聞いた私のメリットは、何?」 唖然。まずそこなの? 「メリットって――、内容も聞いてないし、できるかどうかもわからないのに?」 憮然と言い返した俺に、亜美は鼻で嘲笑う。 「本気で言ってるの? 私にできない事なんてないわっ」そう言って優雅にカクテルを一口。 「……」すごい自信だ。本当に何でもできると思っているのだろうか……。 「で、何度も言わせないで欲しいんだけど私のメリットは?」 少し怒ったような亜美がチラリと俺を一瞥する。その様子はご機嫌とは言えないが、一応話を聞こうとしてくれている。このチャンスを逃すわけにはいかない。俺は亜美と目線を合わせハッキリと言った。 「俺にできることはすべて、望むままに――」 「……」細められた目線。さらに鋭さを増して俺に穴があきそうだ。 「それって……私の思いどうりにってこと?」 「あぁ……」 亜美の赤い口紅がついた口角が上げる。 「なんでもするの?」 「亜美が望むことならば……」 俺の返事に亜美は妖艶な笑みを浮かべた。
/974ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7401人が本棚に入れています
本棚に追加