第五章

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部屋に入ると理子はベッドの上で上半身を起こし、背中を壁にあずけるようにして座っていた。 俺と目が合うと嬉しそうに笑う。 あぁ…… その理子の笑顔に、俺は心の底から安堵していた。 理子が笑っている――、よかった。 いや、違うな……。俺は理子が自分に向かって今も笑ってくれることに、ホッとしたのかもしれない。 どうやら俺は……、あの日腕の中からすり抜けて行った理子を自分で思ってた以上に気に病んでいたらしい……。 久しぶりに見た理子の笑顔に緊張が解けていくようだった。 「よぉっ」軽く右手をあげる。 「久しぶり、悠ちゃん元気?」その言葉に眉を顰める。 「――――元気? じゃねぇだろが」また人の心配をしている。 倒れたのは自分だろうに……。 「あははっ、そうだよね」肩を竦めてみせた理子。見た感じとしては明るく、元気そうに見える――、が油断はできない。 理子は大事なことを隠すのが得意ときた。 ベッドの脇に胡坐をかいて座り込んだ。俺の方が視線が低くなり理子を見上げる形になる。近くで見ると……笑ってはいるがやはり顔色は悪い。 やはり、どこか悪いのか? 「具合は?」 「今は何ともないよ。悠ちゃんの顔見たら……元気でた!」 「調子いいことばっか言って……」呆れるな……。 俺にそんな力があるのなら、ずっとここにいてやるのに――、なんて思ってたとしても言えないけれど。 そもそも、理子はそれを望まないだろう……。頭に浮かぶのは俺らしくない後ろ向きな考え。思わず苦笑い。 俺は拒否されたことを、今も根に持っているらしい。 新たな自分発見に驚いていたら……、「悠ちゃん、今日はどうしてここにいるの?」不意打ちの質問。 「えっ」やばい、言い訳を考えてなかった……。 「ママが悠ちゃんにも連絡したの?」 「え、あっ、いや……たまたま親父に用があって、家にいたんだよ。そしたら、理子が倒れたって聞いて……」上手く誤魔化せたか? チラリと盗み見るも、
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