第1章【始】

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--下界 大都市ヴァレンディーノ・北商業区-- 『容姿は少年の姿、棺にいる筈だから見つかるまで捜すんだよ。手ぶらで帰ってきたらどうなるかは想定済みだよね?』 今まで長い年月が過ぎても捜していた一人の優秀な魔王様でさえ、見つかりもしなかったモノ。 それをこんな魔王が見つけられるかなんてわからないことだらけで。 街中を何時間も彷徨い、時間を重ねる度にこの街は静けさに包まれていく。 白百合の谷に近いとされるこの街は数年前に騎士団が壊滅したとか。 何でも若く隊長格に上り詰めた青年は行方不明、後に引き継いだ副隊長の子は自殺におまけのように騎士団は壊滅している。 当時は国に反発していた青年は国に命を狙われて仲間にも敵対心を向けられて逃げたという噂があるが本当かどうかは知らない。 そんな噂によって陰気に染まる不穏な雰囲気が流れるこの街にいても見つかる情報がほぼ皆無に等しく、全てに嫌気を感じた。 「……ったく」 舌打ち交じりの唾を捨てればそう口にしてはぁ、と一つ溜息を深く吐いた。 態度を露骨に筋肉が隆々としたその上半身を布一枚隠さないさらけ出したその肉体 顔立ちは凛々しいといえば凛々しいがまだ青臭さが微かに残る不機嫌そうな顔。 その大きな体付きに怯えて近寄らない街の人を横目に情報探しなど色んな事に嫌気をさしてめんどくさそうに頬杖をついてジッとし、暗闇の中で時が流れるのを自然と待つようにした。 魔王"リマス"。気が短く自由自在に能力である重力を発動可能とする物理系統の魔王。 しかし、そんなリマスに頼んだ記憶師と呼ばれる長い年月を生き世界の記憶を記録して後世に伝える役割を持つ青年の容姿をした魔王"ラデン・ミリーデア"も扱いが悪い物だ。 魔界には魔王が数人おり、リマスもその一人であり重力を操る前衛系。 他の者は後衛や前衛様々だがほぼ顔を合わせる機会もあまりないし、顔を合わせなくても通信機として扱われる"連絡型魔道具"を用いれば会話は出来る。
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