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「……嫌いだ、お前なんか」
ああ、何度この言葉を聞いただろう。
憎悪のような炎を宿し、しかし、悲しみが含まれた瞳を私に向けていた彼。
悲しい、彼と私の境遇。
彼の悲しみの色は深く、底などないのではないか。
沈んでしまいそうな程に深い、深い海の色。
「いつか、好きになってもらえるように頑張るよ!」
笑って、でも、私も苦しくて。 苦しいのに、それは押し隠さなければならない。
――私は、強くないといけない。守らなければいけないものがあるから。
手のひらを見つめて、自分が幼い頃の記憶を思い出す。
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