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そういえば、梓が父母が亡くなった後日には、今のように明るい性格になったとのだと春人から聴いた。
「私が源氏を支えなければいけない。皆の命を私が預かっている。誰かが辛い時にせめて、私は前を向いて、皆を引っ張っていかないといけない」と梓が溢した、言葉。
家のために――それを彼女が一番に思っていたのだとしたら。"変わらなければならない"と言い聞かせていたのだとしたら。
自分勝手に彼女を疎み、嫌う自分が恥ずかしい。
「……はっ、……」
恥ずかしさに笑いそうになった時、漏れた声はそれだけだった。
意識がなくなっていく。
――死ぬのか、俺は。
梓にちゃんと謝り、伝えたい。
「お前の背負うものを、俺にも背負わせてほしい」と。
ずっと前から、幼い頃にはもう彼女に惹かれていたけれど、まだ伝えるには良くない状況だから……言えない。
……生きたい。
そう思う自分を、誇りに思う。源氏を怨んでいたあの頃は、思わなかった。仇をとるためなら、命を惜しまない――そう思っていたのに……。
そして、瞼を伏せるとふっと意識を手離した――。
~終わり~
次は後書きです。
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