想いは桜の花に乗せて

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俺はふと、目が覚めてしまった。外を見ても、まだ午前1時だと思う。 和菓子屋で見習いとして働く俺はいつも午前4時に起きる。 ベッドから出、階段を降りると、ドアの隙間から明かりが漏れていた。 「……まだ、起きていたんですか」 いつもは早寝早起きをモットーに夜9時には部屋へ入ってしまう彼が珍しい。 「うん、和菓子の新作を考えていたんだ。朝の仕込みまで寝てられないよ」 花月光志、彼は俺の尊敬する和菓子職人だ。 28という若さなのに、職人としての腕前は誰もが三ツ星をつけたくなる……そんな花月さんは一階に『花月』という和菓子屋を経営していた。 そして、俺はその弟子であり、居候させてもらっている。 「これ……」 散らかった机の上に目を向けると、そこには幼い男の子と女の子が満面の笑みをこちらに向けている写真があった。 背後の桜がとても綺麗に写っていて、春に撮ったのだと思われる。すると、光志さんはその写真を写真立てごと手にし、俺にいたずらっぽい笑みを浮かべた。 「君の初恋がまさか、梓ちゃんだったとはねぇ。源氏も平氏も敵同士でいがみ合っているというのに君達は」 「梓はあの頃、今みたいに明るくなかった。気付かなくて当然です……」
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