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「もしかして、寝てる?目を開けて寝るなんて器用だね」
目の前で手を振って呼び掛ける光志さんに、苦笑した。この様子なら、先程の回想は口に出してなどないだろう。こんな情けない話、誰にも話せない。梓にも言うことはないだろう。
「にしても、君には恋敵が多いね。秋君とか十六夜君とか僕とか」
「……ロリコンなんですか、光志さん」
にこやかに問題発言をされ、むっとする。
「冗談だって。でも、注意しなよ。梓ちゃんの周りには素敵な春人君というできる男がいるからね。まあ、僕は君を応援しているよ。君の和菓子のファン1号は彼女だから」
目が冴えてしまい、もう時間が時間だ。軽口を叩く雇い主をかわして和菓子の仕込みに取り組む。
いつか、彼女が源氏を守るように、俺は彼女の支えとなり、守りたい――そう思い、窓から入ってきた桜の花びらに想いを乗せたのだった――。
~終わり~
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