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男性はツィモナを連れたまま、最初にツィモナがいた崖の上まで来ていた。
ここから森が見下ろせる。
「お前、炎が行き渡っていないところの植物をどかせられるか」
「え・・・・」
「急げ」
「は、はい・・・!」
ツィモナは言われたとおりに植物たちに移動の旨を伝える。
胸の前で手を組み、じっと意識を集中させた。
そうして、炎との境にある植物たちを地面からズルリと移動させる。
ツィモナの力は弱い。
こんな広域を動かすことなど初めてだ。
それなのに出来たのは、火事場の馬鹿力なのだろうか。
「よくやった」
植物が動いたのが見えたのか、男性がツィモナの頭に手を乗せた。
ツィモナはその場にへたりこんだ。
ぶわっと汗が吹き出し、息遣いは荒くなっていた。
「ここからは俺の仕事だな」
男性はそう言うと、すっと腕を前に伸ばした。
ツィモナが森の方へ顔を向けるのとほぼ同時に、炎の部分が何かに囲まれた。
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