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明希…これが私の名前。
誰も知らない、あいつらも知らない…私だけ知っている名前。
自分で付けたの。
本当の名前は知らない。
私は捨てられたら、いらない子だったから。
「珠翠っ!」
明希は目を開けた。「…なに?」
頭は彼女の顔を見てから、「行くぞ」と言った。思わずため息が出る。
珠翠という名は嫌いではない。美しい名前だから、自分には似合わないとは思うけれども。ほら、私の手はいつも血でべっとりと汚れている。そして、その先に倒れる人。即死だろうな…。こんな餓鬼に殺される男ってどうなのかと思う。
「珠翠、行きますよ」
蓮梢の声がして、明希は立ち上がった。この盗賊団の脳ミソである蓮梢は一番頭がキレる。そして、明希を拾った当事者だった。
「…はい」
明希が蓮梢に拾われ、この盗賊団にやって来たのは三歳の時だ。
そして、剣を持たされた。
「…次はどうする?」とお頭が蓮梢に話しかける。
「この際、都にでも入ってみますか。仕事はできませんが、たまには遊びも必要でしょう。だいぶ金も貯まりましたし…」
何が貯まりました、だ。すべて盗んだもののくせに。明希はペッと唾を吐いた。
「花街で一杯やるか」
えぇ、と蓮梢は頷き、二人の決定で都行きが決まった。
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