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発声、受け身、足運びと、次々学んでゆき、一週間も通えばもうこなれたもので、だいちもそれなりにさまになっていた。
「拳脚をくり出す時は、力ではなく“勁”を意識する」
「けい……?」
クマの指導も巧みなもので、要所で邪魔にならない程度に解説をはさみ、よくほめてくれ、よく気づかってくれる。
聞き慣れない言葉を彼が発した時は、いよいよ本当に習い事をしているという気分になった。
「そう、勁だ。
例えば突きを放つ時、げんこつに力をこめるだろう?
でも、それだけで相手を打つわけじゃない。
足先から肩までの各部分の位置や関節の動かし方によって勁を発生させ、腕を伝って拳でそれを相手にぶつける。
勁とは、言わば体の各部分の連動によって得られるエネルギーのことだ。
身体中で発生させたエネルギーを正しく導いて相手に作用させる、それが拳脚をくり出すということ。
ま、要するに、体は使い方や動かし方次第ってことだなー」
二度目の稽古ともなると、クマのアドバイスにも熱が入る。
「突きを放つ時は、直線でねー」
「拍子を大切にしようねー。
受けて、流して、打ち返す、だと三拍子。
だけど、受け流して、打ち返す、なら二拍子だ。
どちらが相手に防御の余裕を与えないか、分かるよねー?」
彼は師として、だいちに様々なことを惜しげもなく教えていった。
これらの稽古を通じて、そらとの交流もじょじょに増え、彼女らがどのような家族なのかを知るようにもなった。
おじいさんはアジア大陸のどこかで、もう二年も修行の旅を続けているのだとか。
そらの父が若かりし頃、武者修行中にふらりと立ち寄ったフランスの空手道場で母と出会い、勢いで結婚を前提に決闘を挑んだのだとか。
今、海外にいる母に、そらはとても会いたいと思っているのだとか。
「えっ?
どうして電話しないの?」
それは稽古中にではなく、母屋の広縁でおばあさんがいれてくれたお茶をすすっているときに、そらの口から聞かされたのだった。
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