種子

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続いてYシャツのボタンを慣れた手つきで外していく。 黒い布の隙間から日焼けを知らない肌が見えた。 しかし、その肌には恐ろしいものが刻まれていた。 乳房の中程に切り傷の十字架が掲げられていた。 そして、Yシャツを脱ぐと肩には人為的に付けられた「AI《アイ》」の文字が、腕には無数の模様が焼き付いていた。 さらに腕をよく見ると切り傷の跡が白い肌よりさらに白く数えきれない程あった。 それ等は全て悠が自らつけたものであった。 悠は傷跡達を哀れみと少し愛しさを含んだ目で見据えた。 「可哀想に……痛かった?」 悠は答えるハズもない腕に問い掛けた。 耳が痛くなる程の静寂が辺りにたちこめた。 悠はふぅと一息つくと、下着を脱いで浴室に足を踏み入れた。 一番風呂なので浴室は冷たく乾いていた。 蛇口をひねりお湯が出てくるのをじっと待つ。 少し暖まってきたら、足元から順にかけていき肩にかける頃には十分な温度に達していた。 悠は風呂が好きだ。 ゆえに、入浴中は歌を歌う。 その歌は、時に悲しく時に華やかである。 そして、今日の歌は悲しいものであった。 愛しい人の為に肉体を捧げる奴隷じみた女性の歌だった。
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