種子

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パソコンを「TheWorld」へと繋ぐ。 ドクン―― 心臓が大きく跳ね上がった。 悠は左胸を押さえ付けた。 額に汗がにじむが、体温は極めて低い。 手の震えが止まらない。 「な、なんだ?」 悠はその場にうずくまった。 背中が徐々に丸くなってきた。 その度に肺が押し潰され、息が苦しくなる。 「カハッ……ぅあぁあ」 右手で胸を押さえ、左手で床を掻き毟った。 数刻もすると苦しみは緩和され、悠は微睡みの中を漂流していた。 あぁ、「TheWorld」に行かないと…… ただそれだけの為に悠は異常な身体を動かした。 M2Dをかけて、コントローラーを握った。 冷や汗はまだ引かないが意識はやけにクリアだ。 悠は「TheWorld」に足を踏み入れた。 《ペイン》 マク・アヌに狼がやってきた。 深夜26時をまわるのに、ユーザーはあちらこちらに居る。 悠は、転送装置にエリアワードをいれた。 Σ 風駆ける 底抜けの 黄金虫 少女は光の粒子となりマク・アヌから姿を消した。 辿り着いた先は夜の草原だった。 リアルの時間帯と同じ此処は少し懐かしさを覚える。
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