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悠は自宅の前まで全力で走ってきた。
まだ呼吸が荒く肩が大きく上下している。
はやく鼓動を鎮めようと心臓を胸の上からギュッと抑える。
どこからか小鳥が飛び去る。
羽根のはばたく音が朝の冷たい静寂を貫けていった。
そして、悠の呼吸もしだいに穏やかなものへとなっていった。
自宅を一瞥する。
居なければならない場所
家からは物音ひとつないことから家族はまだ寝ているようだ。
休日の起床は遅くなるのが必然である。
ドアノブを下げそぅっと引いて玄関の鍵がかかっているかどうか確認する。
案の定鍵はかかっていた。
悠は家の安全に安堵しながらも鍵をあける手間に嫌気を感じた。
鍵穴にスペアキーを音もなく差し込みグィと力を込めてゆっくりまわした。
カチリと微かになるが、あまりにも小さい音は悠の手の平に吸い込まれていった。
再び音もなく鍵穴から鍵をぬく。
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