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ある日僕が散歩から帰ると、彼女はベランダにテーブルと椅子を運び出していた。
「今日はね、黒い夕焼けの日なんだ」
と彼女はいう。
確かにカレンダーにはそう書いてある。
確かにこの時期になるとこの地域は雲が黒くなるほどの鈍い夕焼けを見ることができる。
恐らくほぼ毎日このような夕焼けはやって来ているのだろうが、改めて見ると一瞬、死にたい、と思えるほどの夕焼けが空に広がっている。
「こうやって特別な日にしてみるとこの夕焼けだって特別なものに見えてくるでしょう」
そういうと彼女は紅茶を淹れた。
僕はコーヒーが飲みたかったが、夕焼けの色が滲むカップの液体を見ると、紅茶でもいいかもしれないと思えた。
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