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それから一年。
高校生になったからと言って、特にこれといって前と変わった事はない。
そんな毎日が変わらずに続いていた。
中でも一番変えたかった事……アイツとの関係までもが進展しないまま現在に至っている。
むしろ、余計に会える機会が減るという悪い方向に発展した。
アイツも同じ高校に通ってはいる。
ただ、進路希望が違うせいで教室も離れており、下校時間もオレの方が遅い。
オレは国公立大に進学、アイツは短期大に進学を希望している為だ。
これは仕方のない事だが、一年間もなかなか会えなかったとなると、さすがのオレでも少しは寂しさを覚えるものだ。
ただ、今日だけは入学式兼始業式だった為、自分も早く帰る事が出来た。
アイツに久しぶりに会えるかと、わざわざ早めに教室を出てきたつもりだった。
しかし、残念ながら間に合わなかったらしくアイツの靴は既になかった。
だからこそ今、一人でこんな事を考えつつ、この桜並木を歩いているのだが。
――~♪
いきなり自分の一番お気に入りの音楽が流れる。
vibrationも一緒なので、これは電話だ。
左のポケットから携帯を取り出し、displayを見てみるとそこには『My Darling』の文字。
勿論、これはオレが設定したわけではない。
アイツとaddressを交換した際に弄られ、設定されたのだ。
特に問題があるわけではないのでそのままにしてあるだけ。
「Hi.……何か用か?」
『政宗久しぶり~』
「………Han」
今日、お前が先に帰ってしまわなければ携帯による声だけでなく、実際に会って久しぶりと伝えられたものを。
少しだけ、イラッとする。
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