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『今俺様が何処に居るか分かる?』
「家だろうが」
先に帰ったくせに何を言ってやがる。
そう文句を言いたくなる。
しかし、それはオレの思い込みだったらしい。
携帯の向こうから
『いやいや、折角のこんな機会この俺様が逃すわけないじゃん』
と聞こえてきた。
「………じゃあ何処だよ」
「さぁ、何処でしょ~」
オレが問い返すと、今度は携帯からでなく真後ろから声が聞こえてきた。
一瞬、反応が遅れる。
そのため、相手の顔を見る前に目の前が暗くなった。
……急に抱き寄せられ、顔が胸の辺りに当たったのだ。
「……!!」
驚きにより声が出ない。
だが、恐怖心はない。
こんな事をするのは先程から話していたアイツしかいないからだ。
「ほんと、久しぶり……♪」
そのまま強く、だが苦しくはない程度にぎゅうっと抱きしめられる。
その相手が自分より背が高く、抱きしめられていて暖かみを感じるせいか、自分の鼓動が段々とうるさくなっていく。
「……Long time no see.」
あぁやはり、この暖かさは心地いい。
桜の散る様以上にコイツの暖かさは……
「……嫌いじゃない」
終
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