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初秋の宵の頃――
円形の格子窓から空を見上げると、そこには弓なりの三日月が淡く輝いていた。
「ねぇ、政宗」
隣に座って、俺様の肩に頭を乗せて、三日月を見ている恋人に話し掛ける。
「……なんだ?」
少しだけ、けだるそうに答える政宗。
その間もその一つだけの瞳は、淡い三日月を捉えていた。
……少し、嫉妬しそうになる。
「そんなに好き?」
「ん……まぁ……」
やはり適当な返事が返ってくる。
よく観察していると、けだるそうであると共に、少し眠そうにも見えた。
まぁ、そんなことはどうでもいいのだが、とりあえず三日月でなくこちらを向いて欲しい。
ジーッと視線を送ってみると、それに気付いたらしい政宗は訝しげにこちらを向いた。
その瞬間に唇を奪う。
少し置いてから放すと、政宗はその隻眼を丸くしていて、ハッと何かに気づくとすぐに目線を逸らした。
その頬は淡い三日月の光に照らされて、少しだけ紅葉(モミジ)色に染まっているのが分かる。
「こっち、見ててよ」
先程から心で思っていた事を口にすると、政宗はKissより先に言えよ……とか何とかぶつぶつ言いつつ、三日月から目を離してくれた。
「いい子いい子……♪」
「ガキ扱いすん……っ」
政宗が全てを言い終わる前にもう一度口を塞いでやる。
今度は舌を絡ませる深い口づけ。
「ん………っ」
政宗は息を詰める。まだあまり慣れていないのだ。
そんな姿も可愛く見えて、ついもっと長くと望んでしまうが、とりあえず政宗が窒息しないうちに放してやった。
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