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結局、俺様の恋人だった人――
伊達政宗が忌み嫌っていた屋敷、それも本人の葬儀などには行く気にもなれず……
否、行く勇気もなく、月日は流れた。
「酷い顔だけど……大丈夫かい?」
そう、公園のベンチで座り込んでいた時に、急に声をかけられたのは、確か葬儀があったらしい日から、丁度3週間が経とうとしていた頃だった。
「あんたは確か……前田の風来坊か」
「お!俺の事知ってたの?」
当たり前だ。
自分が二年生、政宗が一年生の時、政宗のクラスメートで、よく政宗にちょっかいを出していた。
知っていたもなにも、記憶に焼き付けている。
「何の用?俺様忙しいんだけど」
そう言いつつ立ち上がり、ズボンの埃をはらう。
すぐに立ち去ろうと思っていたが、風来坊のある言葉で足が動きを止めた。
「政宗に逢いたいかい?」
「……なに、言ってんの」
足とは正反対に、口は勝手に動く。
政宗はもういないのだ、と。
しかし、風来坊は少しも気にしてない様子で続けた。
「逢える場所、教えてあげるよ――」
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