再々会

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「えっ……」 その色はあの人がよく着ていたお気に入りの色で、そのヒト自身はほのかに白く透き通っていて…… つまり、既にこの世には存在していない事を物語っていた。 「ちょ……政宗っ」 駆け寄り、その手を掴もうと手を伸ばす。 が、伸ばした手は空気を掴んだ。 そのヒトはうっすらと、哀しそうに微笑む。 これ以上、何かしようとしても無駄だ。 そう思った。 「……政宗、何で先に行っちゃったのさ」 触れられなくても言葉は通じるはずだ、とそのヒト―― 政宗に話し掛ける。 『destiny、だろ』 と政宗の口は動き、声は頭に響いた。 続いて 『オレにはどうしようもねぇよ』 と困ったように苦笑した。 ……この人は、意識しているのかいないのか。 過去にも同じ事―― 出会った時とか、初めて会った時代の最期と同じ事を言っている。 「あの、さ……」 声が震える。 今まで伝えられなかった事、ちゃんと伝えたいのに…… 情けない限りだ。 「好き、だったよ……ずっと……」 ありきたりでありふれた言葉。 ドラマなどでよく聞く台詞。 だけど、これが一番想いが伝わる気がした。 「次もちゃんと……見つけるから、さ……」 政宗を包んでいた光が俺様を包む。 政宗の瞳からは雫が流れ落ちたように見えた。 俺様はそれには何も言わず、触れた感覚はないものの、その細い身体を抱きしめる。 「だから……早くかえってきて、ね?」 光はより強くなり、天(ソラ)に昇って行く。 その光が消えきった時、手には現代にしたら珍しい、黒い眼帯が握らされていた。 それには、一滴の涙の染みた後が残っていた。 「政、宗……」 なけなしの声を絞りだし、眼帯を握りしめてその場に座り込む。 涙一雫などでは飽き足らず、何十もの雫を地面に落とした。 「好き……大好きだよ、今も……もちろん、これからも……ね」 終
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