ごほうび

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「あ、そうそう、ごほうびあげなきゃね」 2階から1階へと向かう階段の途中、佐助は忘れる所だった、と話を持ち出した。 「そういや、甘いものって何だ?」 「すぐわかるよ。ほら、目つむって」 言いながら佐助はオレを隅へと押しやる。 ここまできて、ただのごほうびにしてはおかしい、と気づいた。 だが今更いらないなどと言うわけにもいかず、仕方なく軽く返事をして目をつむる。 すると予想通り、唇に暖かくて柔らかい物が触れた。 ついでに何か温(ヌル)い固体を入れられて、すぐに離された。 話すと落としてしまいそうな気がしたので何も言わず、まずはそれが何なのかを探ろうと舌の上で転がしてみる。 するとすごく甘い味がした。 佐助が「おいしい?」と聞いてくるので、軽く頷く。 その温い固体はcandyだった。 少しの間舐め続け、はじめより小さくなったcandyを口の端に追いやり、口を開く。 「candyなら手渡しでいいだろうが」 「違うよ。ごほうびはキスの方」 「……甘い物って言ってただろ」 「そう言うと思った。だから飴用意したんだよ」 「fum……」 別に、オレとしてはkissだけでも良かったんだがな。 そう考えてはたと思う。 段々コイツの良いように思考が犯されている気が…… 「どーしたの?」 佐助が顔を覗き込んで聞いてくる。 勿論、今の考えを話すわけにはいかず、何でもねぇよと答える。 言ったら絶対調子にのる。 「えー、気になるじゃん」 佐助はしつこく聞いてくるが、自分の中で完結したからいいのだと言って一蹴。 そのまま再度聞いてこないように、軽く腕を引いた。 「暗くなる前に帰ろうぜ」 「あれ、政宗って暗い所苦手だっけ?」 「…………まぁ、な」 「かーわい♪」 「……るせぇっ」 1階に下りてすぐの窓から差し込む夕日は、可愛いと言われて少し赤みを帯びる頬を隠してくれるように真っ赤で、いつもより優しいように感じた。 終
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