愛し

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少し前―― 織田信長を倒す為に共闘していた時までは敵対心など無に等しかった。 だが、今の政宗からは敵対心…… いや、あれは闘争心とでも言おうか。 政宗は真田の旦那と決着をつけようと燃えているように思われる。 そのせいで俺様まで伊達軍、特に右目の旦那からは敵扱い。 よって必然的に政宗には会えない、というか会わせてもらえない。 屋根裏に忍び込めても、伊達に組していて、右目の旦那から命令されている黒い忍達に追い払われるのだ。 本当に勘弁してほしい。 「はぁ……」 本日何度目かの溜息をつく。 よくよく考えれば、俺様が政宗に会える道理など、本来武田と伊達が同盟を組んでいた頃にもなかったのだ。 勿論今はあるはずもない。 俺様は武田に雇われた一介の戦忍にすぎず、政宗は国を治める大名なのだから。 それを考えるとたしかに伊達軍の主張はもっともであり、俺様自身も理解はしている。 理解はしているのだが、どうしても心の方が納得しないのだ。 本当に、逢いたいものは逢いたいのだから仕方がない。 「……もう一回、試してみようかな」 止まりかけていた思考を再び巡らせる。 あの伊達の黒い忍達は情報収集などには長けているが、戦いならば確実にこちらが勝(マサ)っている。 いつもは騒ぎにしたくないとか、政宗に知られた時に怒られるのが嫌だとかで素直に追い払われていたのだが、本気を出せば…… 「よし、っと」 そんな事で本気を出すなど、なんて誰かさんには罵られるような気はしたが、ひとつ気合いを入れる。 今日こそは会いに行こう。 政宗がどう思うかは分からないが、どうであろうといつものように飄々とした姿を見せればいい。 ――ピーーーッ 決意と共に、ある特定の鳥にしか聞こえない笛を吹く。 「待っててね。今行くから」 終
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